「また世界のどこかで」施設の撤去作業始まる
帰国選手を見送る人、東京観光を楽しむ大会関係者の姿も
新型コロナウイルス禍で異例ずくめとなった東京五輪。閉幕から一夜明けた9日、会場周辺では大会施設の撤去作業が始まった。「また世界のどこかで会いましょう」。英語のメッセージを掲げ、帰国する選手らを見送る人もいた。
サッカーなどの会場となった横浜市。五輪モニュメントの撤去作業が進められる中、名残惜しそうに記念撮影をする家族連れなどが見られた。
愛犬に金メダルの飾りを掛けた飲食店従業員の30代女性は、スケートボード男子の金メダリスト堀米雄斗選手のファン。「自分との闘いという感じで勇気をもらった」と振り返った。
東京・浅草では、大会関係者とみられる外国人が、記念撮影や土産物を買うなどして観光を楽しんでいた。帰国前に子供への土産を探しに来たウクライナのメディア関係者の男性は、期間中の行動制限が厳しかったとし、「もっと東京を見たかった」と残念がった。
公式グッズを販売する東京・上野のオフィシャルショップには、まだ多くの商品が並んでいた。Tシャツなどを買った台東区の女性会社員(50)は「余韻に浸りたくてグッズを買った。ただ今後の感染増加が気掛かり」と複雑な表情を見せた。
東京・晴海の選手村では成田空港に向かうバスや、引っ越し業者のロゴが入った大型トラックが頻繁に出入りしていた。
「ありがとう。また世界のどこかで会いましょう」。近くに住む男性会社員(57)は妻と一緒に英語のメッセージ板を掲げ、選手らを見送った。政府や大会組織委員会に対しては、「国民の理解を得ず強行開催した」との不信感があるという。「終わって良かったでは済まされない。今後きちんと検証し説明すべきだ」と訴えた。
運河を挟んで選手村の対岸にある公園では、会社経営者の男性(44)がベンチに座っていた。祖父がベルリン五輪に出場したボート選手だったこともあり、地元開催を楽しみにしていたという。
しかし、コロナで仕事仲間の家族が亡くなり、自身の仕事も大きな影響を受けた。「開催して良かったのかは分からない」と思いつつ、「せめて将来を担う子供たちには、大会を見せてあげたかった」と語った。