強権体制のベラルーシ、五輪を国威発揚の手段に


「欧州最後の独裁者」ルカシェンコ氏が選手に強い圧力

強権体制のベラルーシ、五輪を国威発揚の手段に

反政権デモに参加するベラルーシの人々=2020年8月、ミンスク(AFP時事)


 
 東京五輪の陸上女子競技に参加するベラルーシのクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手(24)が「投獄されるかもしれない」と訴え、帰国せず亡命に動く事態が起きた。旧ソ連構成国ベラルーシでは強権的なルカシェンコ大統領がスポーツを国威発揚の手段と位置付け、選手団は政権への忠誠を要求されるなど、強い圧力にさらされている。

 ツィマノウスカヤ選手はコーチを批判したことで代表から外され、帰国を命じられたと訴えた。母国メディアのインタビューに対し、コーチから「(陸上競技)連盟やスポーツ省のレベルではなく、さらに上層部の問題になっている」と告げられたとも明かした。反政権派幹部パベル・ラトゥシコ氏は、ルカシェンコ氏が自ら帰国を命令したとの見方を示す。

 「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ氏の東京五輪への関心は高い。7月29日、自国選手の成績が過去と比べて振るわないことを受け「どの国よりもスポーツに資金をつぎ込んでいるのに」と強い不満を表明。ハングリー精神が足りないと決め付けた。

 昨年8月の大統領選はルカシェンコ氏の6選が発表されたが、長期政権や選挙不正に抗議する反政権デモが拡大。政権はデモを徹底弾圧し、五輪出場経験のあるアスリートも拘束された。

 政権の圧力から選手を守るため、競泳女子のベラルーシ代表として2012年ロンドン五輪で銀メダルを獲得し、現在は国外で活動するアリャクサンドラ・ヘラシメニアさんが中心となって、昨年に「ベラルーシ・スポーツ連帯基金」が設立された。基金は今回、ツィマノウスカヤ選手の支援に関わっており、本人の声明や動向をインターネット交流サイト(SNS)で伝えている。(モスクワ時事)