インドネシアの病院、一晩で患者63人が死亡
医療用酸素切れ、生き延びた患者は「深呼吸心掛けた」
新型コロナウイルス感染が爆発的に拡大しているインドネシアの病院で医療用酸素が底を突き、一晩に63人の患者が死亡する惨事が起きた。酸素マスクを外された患者の一人は「なるべく深く呼吸して」生き延びたという。「失政」の象徴として報じられ、政府批判が高まっている。
この病院は、ジョクジャカルタ特別州にあるサルジト記念病院。時事通信の取材に応じた職員によると、3日午後8時(日本時間同10時)ごろ院内の酸素が尽き、同日夜から4日朝までに患者63人が死亡した。同院は約800床のうち300床を新型コロナ患者に当てている。
有力紙コンパスによると、入院していたスルヤさん(47)は3日午後、看護師から「酸素が足りないので、重症ではない人から供給を止める」と宣告された。酸素供給が途絶えた夜、院内はパニックとなり、看護師が慌ただしく駆け回るのを目撃。生き延びた患者は、家族に酸素を確保してもらったり「できるだけの深呼吸」をしたりしたと証言した。
酸素の不足と価格高騰は、同様の事態を各地で引き起こしている。別の地元メディアによれば、西ジャワ州の総合病院では酸素切れが20日までに3回発生。その影響で計14人が死亡した。
政府は工業用酸素を医療用に転換させたり、医療用酸素の輸入関税を免除したりしたが、高まる需要に供給が追い付いていない。国内107の市民団体は25日、連名で声明を発表。「7日以内に(不足を)解消しなければ政府を訴える」と警告した。
1日の感染死者数は26日まで11日連続で1000人を上回り、27日には2000人を超えた。市民団体によると、入院さえできずに自宅や車中で死亡した人は6月以降少なくとも2700人に上る。(ジャカルタ時事)