酒提供店との取引停止、反発受け要請を撤回
政府が方針転換、混乱にいら立つ自民党、野党は徹底追及へ
政府は13日、新型コロナウイルス対策で酒類販売業者に対し、酒類提供を続ける飲食店との取引停止を求めた方針を撤回すると発表した。与党や業界団体から強い反発が出ていた。先に取り下げた金融機関への協力依頼をめぐり、関係省庁で調整していたことも判明した。
菅義偉首相は同日、公明党の山口那津男代表と首相官邸で会談。緊急事態宣言下の飲食店の酒類提供停止をめぐる西村康稔経済再生担当相の発言について「ご心配をお掛けしました」と伝えた。西村氏も山口氏に電話し、「申し訳ありません」と陳謝した。
西村氏はこれに先立つ記者会見で、金融機関への働き掛けをめぐり金融庁、経済産業省、財務省に協力依頼したと強調。首相が出席した関係閣僚会合で、事務方から説明があったことも明かした。
これに対し、省庁側は距離を置く。麻生太郎副総理兼財務相は「融資を止めろという話は普通に考えたらおかしい」と疑問視。梶山弘志経済産業相も「強い違和感を覚えた」と述べた。
政府対応が混乱を招いていることに、自民党はいら立ちを隠さない。二階俊博幹事長は党総務会で「誤解を受けることがないよう発言には慎重を尽くしてほしい」と注文。同党の議員連盟「街の酒屋さんを守る国会議員の会」(会長・田中和徳前復興相)が13日に開いた会合では、酒類販売業者への要請撤回を求める意見が相次いだ。
党側が危機感を強めるのは、次期衆院選に逆風となりかねないためだ。ベテラン議員は「国民の怒りが蓄積している」と警告。党幹部の一人は「(西村氏は)国会開会中なら辞職だ」と踏み込んだ。
野党は14、15両日の衆参両院内閣委員会の閉会中審査で、西村氏らを徹底追及する方針だ。立憲民主党の枝野幸男代表は党会合で「西村氏個人の問題にとどまらない、政権全体の体質の問題だ」と批判。国民民主党の玉木雄一郎代表も記者団に「内閣全体の責任が厳しく問われる」と断じた。