一斉休校せず、試される学校・保護者の地域力
《 記 者 の 視 点 》
全国的に新型コロナウイルスの新規感染者の増加が止まらない。新規感染者の8割から9割がデルタ株に置き換わり、30代以下の感染リスクが高まっている。また、重症化する割合も高齢者中心だったものが若年層に広がり、短期間でクラスター(集団感染)化することも特徴のようだ。市中の人流もあまり減少しておらず、保護者から子供、子供から親といった家庭内感染も急激に増えている。感染者は高止まりで減少傾向が見られない、厄介な状態が続いている。
あと数日で2学期を迎えようとしている学校現場でも、感染対策に余念がない。萩生田光一文部科学相は、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた小中学校などの一斉休校を国として再びお願いすることはない、と一斉休校を否定している。その一方で、各自治体が個別に臨時休校や夏休みの延長を行うことには、尊重したいと理解を示した。
文科省は、校内で感染者や濃厚接触者が出た場合に備え、保護者との連絡体制を協議することや、近隣の大学などのワクチン職域接種を利用して教職員の接種を促進するよう求める通知を各都道府県教育委員会に通達を発出している。
萩生田文科相の考えは「できるだけ子供の学びの機会を守ること」で、休校となった学校ではオンライン授業や情報通信技術(ICT)を活用した学習を継続したいと強調している。だが、現実は1人1台タブレットの支給を進めているが、学校によっては専門教師の育成が追い付いておらず、機材の設定がなされないまま、山積みという学校もある。
小池百合子都知事は、学校連携観戦プログラムを実施し、「パラリンピアンが活躍する姿を見て人生の糧にしてもらいたい」という意思を示している。都によると、プログラムは都内8自治体と都立23校の合計13万2000人が参加するというもの。感染対策を十分に実施し安心安全な形で、五輪の経験を生かし、感染症や熱中症対策を徹底するとしている。パラリンピック開催に異議を唱えるものではないが、徹底した感染対策をしても、漏れが出ることは確かなこと。それをどう扱うか、課題は多い。
政府が提案する小中学校、高校の新型コロナウイルス対策は、既に配布している高校に加え、小中学校抗原検査の簡易キットを配布するというもの。学校で感染者が出た場合、濃厚接触者を速やかに特定し対応する仕組みを構築している。
対策はそれだけでは済まない。診察する校医の協力も必要だし、隔離しながら、授業を受けられるシステムづくり、学校の消毒をするボランティアも必要になってくる。感染した子供を家に残して仕事に出なければならない保護者もいて、面倒を見てくれる子供食堂、子供の居場所も必要になってくる。ワクチン接種を受けていても、3密を避け、マスク着用、うがい、手洗い、手指の消毒という基本は変わらない。
昔のように町内会組織がしっかりしていれば、遅滞なく手当てができるのだが、少子高齢化で地域社会と学校の連携が希薄になっている昨今、自治体・地域社会・学校がタッグを組んだ地域力が試される時に来ている。
教育部長 太田 和宏