「助け合い、良き未来を」天皇陛下が新年の御感想
天皇御一家は1日、2014年の新年を迎えられた。天皇陛下は年頭に当たり、文書で御感想を発表された。東日本大震災後3度目の厳しい冬を迎えた被災者を「改めて深く案じられます」と心配され、「国民皆が苦しい人々の荷を少しでも分かち持つ気持ちを失わず、助け合い、励まし合っていくとともに、世界の人々とも相携え、平和を求め、良き未来を築くために力を尽くしていくよう願っています」とつづられた。
また、冬場の雪下ろしで毎年多くの人が事故に遭うことに触れられ、「雪の深くなる季節、屋根の雪下ろしの事故には十分に気を付けてください」と呼び掛けられた。
両陛下は1日、皇居・宮殿で、皇族方や三権の長らから新年のお祝いを受けられる。2日の一般参賀では皇族方とともに5回、宮殿のベランダに立たれる。
天皇陛下は昨年12月、80歳の傘寿を迎えられ、皇后陛下も今年10月で80歳。今年も昨年同様、多くの御公務が予定されている。宮内庁は両陛下の年齢や体調に配慮し、御公務がない日を増やしたり、行事の進め方や日程の組み方を見直したりしたいとしている。
天皇陛下の新年の御感想全文
東日本大震災から三度目の冬が巡ってきましたが、放射能汚染によりかつて住んでいた地域に戻れずにいる人々や、仮設住宅で厳しい冬を過ごす人々など、年頭に当たり、被災者のことが改めて深く案じられます。
昨年も、多くの人々が様々な困難に直面し、苦労も多かったことと察していますが、新しく迎えたこの年に、国民皆が苦しい人々の荷を少しでも分かち持つ気持ちを失わず、助け合い、励まし合っていくとともに、世界の人々とも相携え、平和を求め、良き未来を築くために力を尽くしていくよう願っています。
雪の深くなる季節、屋根の雪下ろしの事故には十分に気を付けてください。
本年が、我が国の人々、そして世界の人々にとって幸せな年になることを祈ります。
両陛下が詠まれた歌
宮内庁は新年に当たり、天皇、皇后両陛下が昨年詠まれた歌のうち計8首を発表した。天皇陛下は東日本大震災の被災者や、昨年10月に懇談した熊本県の水俣病患者への思いなどを、皇后陛下は昨年7月に訪問した岩手県遠野市で感じたことなどを、それぞれ歌にされた。
【天皇陛下】(5首)
〈あんずの里〉
赤き萼(がく)の反りつつ咲ける白き花のあんず愛でつつ妹と歩みぬ
〈大山(だいせん)ロイヤルホテルにて〉
大山を果たてに望む窓近く体かはしつついはつばめ飛ぶ
〈水俣を訪れて〉
患ひの元知れずして病みをりし人らの苦しみいかばかりなりし
〈皇居にて 二首〉
年毎に東京の空暖かく紅葉(もみぢば)赤く暮れに残れり
被災地の冬の暮らしはいかならむ陽(ひ)の暖かき東京にゐて
【皇后陛下】(3首)
〈打ち水〉
花槐(はなゑんじゆ)花なき枝葉そよぎいで水打ちし庭に風立ち来たる
〈遠野〉
何処(いづこ)にか流れのあらむ尋(たづ)ね来し遠野静かに水の音する
〈演奏会〉
左手(ゆんで)なるピアノの音色(ねいろ)耳朶(じだ)にありて灯(ひ)ともしそめし町を帰りぬ