いじめの加害者?


 東京周辺で暮らす小中学校時代の同級生たちが年に何度か集まる。その時、決まって盛り上がる話題がある。顔を見せない同級生の消息についてだ。

 先日も、小規模の食事会を開いた時、「A子さん、一度も顔見せないね。どうしているかな」と、ある女性に話題が及んだ。そして最近、里帰りをした際、A子さんと偶然出会ったという同級生の一人がこんな話をした。

 A子さんは現在、教師をしていて、元気そうだった。しかし、同級会の案内が来ても参加しないのは、小中学校時代をあまり思い出したくないからだという。いじめられたと感じていたのだった。

 その話を聞いて「そうかもしれないな」と納得するともに、忸怩たる思いにかられた。筆者もいじめの加害者だったかもしれないと思ったからだ。

 家庭が貧しかったのか、A子さんは毎日、みすぼらしく、とても清潔とは言えない服を着て登校していた。容姿もぱっとせず暗いイメージだった。口数も少なかった。暴力によるいじめはなかったと記憶するが、同級生から悪戯やからかいを受けることはしばしばだった。

 現在、文部科学省は被害を受けた子供が心理的苦痛を感じる全ての行為をいじめと定義している。それからすれば、A子さんは間違いなくいじめの被害者だった。筆者が彼女のみすぼらしく、暗いイメージを今も覚えているのだから、当時は直にそれを感じ取って、言葉によるいじめを行った可能性は十分にあるのだ。

 もし会う機会があったら、筆者からいじめられたかどうかを確かめて、謝りたいと思うが、果たして彼女が今後、同級会に顔を見せることはあるのか。それはかなわなくとも、自分はいじめたつもりはなくても加害者になっている場合があることを子供に話して聞かせなければ、と思っている。(田)