買い物難民700万時代
大手総合スーパー各社が相次いで大規模閉店の方針を打ち出した。需要が見込めない大型店の閉鎖は買い物難民を生む。
先週「カンブリア宮殿」というテレビ番組で、高齢化社会の買い物難民を救う新ビジネスを紹介していた。
徒歩50㍍のスーパーに歩いていけない、店が近くにない過疎地のお年寄り。こうした買い物難民の家を軽トラックの移動スーパーで一軒一軒回る。一言でいえば、昔の行商スタイルを復活させた新ビジネスモデルだ。
仕組みはまず40軒の買い物難民を探し出し、線で結びルートマップを作る。個人事業主の移動スーパーは地元のスーパーから品物を仕入れ、お年寄りの家の玄関先まで商品を運ぶ。移動販売で利益をあげるのは難しいという業界の常識を打ち破り、限界集落で一軒当たりの買い物単価が5千円超、一日11万円を売り上げるというから驚きだ。
移動スーパーは買い物難民を救っただけでない。売り手、買い手、地元スーパー、三方良しのビジネスモデルで地域を活性化させているという。
しかも、週2回、1年続けば家族以上の信頼関係が生まれ、お年寄りが元気になる。番組のなかで移動スーパーを考案した住友達也氏が「血の通った、息遣いを感じる人とのつながりが生きる力になっていく」と語った言葉が心に響いた。
筆者の住む街も40年前にできた住宅街だが、高齢化が進んでいる。2年前、地域の中型スーパーが突然閉店。翌年には大きな生協が閉店し、老人施設ができた。大型店にかわって、新たにコンビニが3軒。さらに、宅配や出張販売、朝市や土曜市といった地元の市が復活してきている。
通産省の最新調査によると、全国買い物難民は700万人。高齢社会は小回りの利く移動販売、昔ながらの酒屋さんの御用聞きスタイルが復活する時代かもかもしれない。(光)