所沢「育休退園」の波紋
6月25日、所沢市の保育園に子供を預けている保護者11人が、「育休」で上の子が退園となる、市の運用の差し止めを求めて提訴した。この1カ月、育休退園問題をめぐって、さまざまな反応がウェブ上で沸騰した。「育休取得し出産後は、上の子が0~2歳児は原則退園」とする所沢市の対応に賛成の声が多かった。
原告側の提訴理由は、「育休は復帰の準備期間で就労の一形態」であり、児童から保育園を奪うのは、「児童・保護者いずれにも深刻な不利益を与える」というものだ。保育を受ける権利の濫用とも受け取れる。待機児の解消を考えれば、市の「育休退園」は十分理解できる。
所沢市の問題をめぐっては、働くママと自宅で子育てする主婦ママとの見方の違い、子育て支援をめぐる両者の不公平感が賛否によく表れている。働くママからは、産みたいときに産めない社会では第2子を産み控える人が増える、国の少子化対策に逆行している。一方、主婦ママは、第2子出産後、専業主婦は自分で子供をみているわけで、育休なら自分がみるのは当然ではないかと、冷ややかだ。
実際、所沢市をはじめ行政は0~2歳児1人当たり月20~40万の保育費用を掛けている。それを育休中の親の当然の権利のように主張する。主婦ママのみならず市民の立場からみても、「許せない」という思いが湧いてくるのも当然だ。
結局、7月中旬、原告の13世帯17人のうち2世帯2人が在園継続となったことが判明した。認めた理由は明らかにされていない。
所沢のように「育休退園」をとっている所は多いわけではない。政府は第2子出産後の継続就業を奨励しており、今回の所沢の対応をきっかけに、育休中の保育が広がる懸念がある。
そうなると、何のための「育休」なのか。子育ての責任主体は誰なのか。ますます曖昧(あいまい)なものになる。(光)