たばこ規制強化の壁
都内の飲食店に入ると、たばこの煙や臭いに思わず顔をしかめてしまうことがある。たばこを吸わない上に、受動喫煙防止条例があり、禁煙・分煙を徹底する神奈川県に住む人間(筆者)としては、都の喫煙対策の遅れがどうしても目についてしまう。
2020年の東京五輪を見据え、舛添要一知事が条例制定による受動喫煙防止強化に意欲を示したが、厚い壁に阻まれているようだ。医療関係者が対策強化を後押しする一方で、客離れを懸念する外食産業などが反対。後者に同調する都議会議員も多く、舛添知事は主張をトーンダウンさせている。
日本人の喫煙率は男性約30%、女性約10%。喫煙者は年々減る傾向にあるが、男性の喫煙率は他の先進国と比べるとまだまだ高い。国の健康づくりの目標を定めた「健康日本21」は、喫煙率を男女平均12・2%に下げることを目指す。
その目標達成の鍵となるのはたばこに手を出す未成年者を減らすことだが、それには国や自治体が禁煙推進に力を入れ、たばこは健康を害するとの強いメッセージを発することが重要となる。
ある製薬会社の調査によると、日本に住む外国人の約6割は、日本は母国よりもたばこを吸いやすいと感じているという。喫煙できる場所が多いからだ。国際オリンピック委員会(IOC)が受動喫煙防止対策に力を入れていることを受け、近年、五輪開催が決定すると、開催都市は法令による対策を強化する流れが定着している。
東京もその流れに乗って、“禁煙都市”づくりを進めるチャンスだが、五輪で東京を訪れる観光客は喫煙者もいるのだから、そういう人のおもてなしも大切だ、なんて屁理屈を並べるたばこ規制反対派もいる。五輪によってたばこ対策後進国の汚名を世界に広めることにならなければいいのだが……。(森)