認知症を知る
厚生労働省によると、2013年現在、認知症の高齢者は462万人。予備軍を含めると800万人に達している。つまり、日本は65歳以上の4人に1人が認知症及びその予備軍と言われる時代に入ったことになる。
そんな数字を実感する出来事があった。親戚筋にあたる独り暮らしの高齢者が徘徊(はいかい)し出したのだ。近所ということもあって、買い物や病院通いの送り迎えなど、妻はなにかと手伝ってきたが、徘徊となると、手に余る。幸いにも地域の人々があちこちと手を回したおかげで、受け入れてくれる施設を探すことができた。
ある認知症の専門医がこんなことを言っていた。「これだけ高齢者が多くなると、認知症は医療以外の分野での課題が多い」と。その一つは地域の力であり、もう一つは教育だ。
徘徊は、一般人による介護が難しいが、超高齢社会では、認知症の人に対する接し方はだれもが身に付けておくべきマナーのようなものだろう。その前提として必要なのは、認知症に対する正しい知識を学ぶこと。それが尊厳を持った接し方につながるのだ。
厚労省は、認知症の人の生活を見守り、支援の効果を上げるため「認知症サポーター」の養成を続けている。その数は今年9月末現在、540万人に達したという。私も3年前に、その養成講座を受け、認知症の人と接する時は、人の優しさや思いやりが問われることに気づいた。
私の脳も最近、かなりくたびれてきたようで、忘れ物が多くなった。先日、「眼鏡がない」と、家中を探し回ったが、鏡を見て、いつものように顔に掛けてあるのに気づいて、大笑いしてしまった。
忘れ物が増えると、加齢を感じ、気落ちする人が少なくない。しかし、私の場合、長年、自分の精神活動を支えてくれた脳がいとおしく感じた。これも認知症サポーターになったおかげかもしれない。(森)