消える中吊り広告
円安を追い風に、日本を訪れる外国人観光客が増えている。今年は10月までに1100万人を突破。過去最高となった昨年の年間記録(1036万人)を既に超えてしまった。この調子だと、年末には1300万人に達するという。
東京・渋谷は人気のスポットだが、外国人がよくカメラを向けるのがセンター街と渋谷駅を結ぶスクランブル交差点。大勢の通行人がぶつからずに整然と道路を渡る光景が驚きなのだそうだ。その交差点を真っ正面に見るビル2階に「スターバックス」がある。窓際にはいつも多くの外国人が陣取り、シャッターを切りながら行き交う通行人を眺めている。
日本人には当たり前の光景や商品でも外国人を驚かせるものが少なくない。ランドセルもその一つで、ファッショングッズとして欧米人に人気である。
外国人から褒められるなら悪い気はしないが、逆に顰蹙(ひんしゅく)を買う場合もある。電車の中吊り広告のことだ。日本のように、公共空間を狭苦しくするほど、広告がぶら下がっている電車は海外にはほとんどない。
ましてや、女性のヌード写真も目に飛び込んでくる。「子供もいる公共の場なのに」と、顔をしかめる外国人は多いはず。
そんな中吊り広告が消えるのも時間の問題となっている。JR東日本はモニターで宣伝を流す新型車両を来年から導入。4、5年後にはすべてが新型車両に切り替わるというから、中吊り広告はいずれ消える運命にある。
だが、安心はできない。車内で子供に見せられないような動画が流れたら最悪である。政府は2020年までに外国人観光客を2000万人まで増やす計画だが、公共空間で流す動画には日本人だけでなく外国人にも不快感を与えない規制基準を設け、「日本の電車内は世界のお手本」といい意味で驚かせたいものだ。(森)