近居のススメ


 「近居促進制度」というのをご存知だろうか。1年前にUR賃貸住宅が始めた制度で、54万戸を対象に近居世帯の家賃を5年間5%割り引くという優遇制度だ。

 子育て・高齢者等世帯と支援する親族世帯の双方が同一駅圏に近居することで、介護や子育ての相互扶助機能を高めようというもの。品川区では親世帯と同居または近居するファミリーに転入・転居費用の一部を支援したり、千葉市では三世代同居等支援事業として、同居・近居の住宅費用助成を行っている。

 内閣府の調査(「家族と地域における子育てに関する意識調査」)では、「理想の家族の住み方」として、祖父母との近居あるいは同居を望む人が5割を超えた。例えば母親が第2子出産後に、仕事を辞める理由は保育園入所が困難だったり、仕事と子育ての両立の大変さが増すため。祖父母の孫育ての力に期待し、同居・近居を望む共働き世帯のニーズは高い。住宅メーカーでも親世帯と子供世帯がそれぞれ家を持つより、住宅建築コストや家計出費を低く抑えられると、さまざまなタイプの2世帯住宅の売り出しに力を入れ始めた。

 筆者自身は近居住まいで子育てをした1人だ。近居のメリットを挙げるとすれば、里帰り出産の必要がないこと。夫や義母がそばに居ることで、産褥(さんじょく)期の不安感がずいぶん軽減された。また夫の両親の家から徒歩10分という絶妙な距離感がお互いに良かったようだ。

 最近の2世帯住宅は精神面にも配慮して設計されているが、やはり同居となると人間関係上のストレスも覚悟しなければならないかもしれない。

 同居・近居、それぞれ長短はあるが、祖父母の孫育ては教育的にも良い。共働きが当たり前となったいま、家族の支え合いができる近居はこれからの住まい方のトレンドとなりそうだ。(光)