スペインの登山家イナキ・オチョア・デ・…
スペインの登山家イナキ・オチョア・デ・オルツァさんは2008年、ヒマラヤのアンナプルナで命を落とした。高山病によるもので、標高7400メートルのキャンプでスイスの登山家ウーリー・ステックさんによって看取られた。
その死が今月27日公開されるドキュメンタリー映画「アンナプルナ南壁 7400メートルの男たち」で描かれている。主人公はイナキさんではなく、報を受けて救助に駆けつけた世界10カ国12人の登山家たち。
そのうち5人が献身的な救助活動によって、翌年に「登山界のアカデミー賞」と言われるフランスのピオレドール賞を受賞。パブロ・イラブ、ミゲルチョ・モリナ両監督は、彼らが救助にかけた熱い思いを描く。
カメラはその数年後、登山家たちをそれぞれの国に訪ねて、彼らの言葉を引き出す。映画は登山家たちの証言集とも言える。知らせを受けて直ちに出発し、最初に現地に到着したのがウーリーさん。
「現場に駆けつけ全力を尽くさなくては。必ず助けられると信じて動く。何もせず投げ出すのは間違いだ。信じて-最後の瞬間まで最善を尽くすんだ」とあふれる思いを語っている。
救助の要請をし、ウーリーさんが来るまでイナキさんの看病をしたルーマニア人のホリア・コリバサヌさんは「イナキを置いていくなんて考えられなかった。そんなことをしたら僕は一生後悔する。人として他の選択肢はない」と言う。彼らのチームプレーが実に見事。