過剰な「個人情報保護」


 昨年の春頃だった。ある洋服店で買い物をした際、メール会員になれば割引になると勧められた。生来の素直さから、店員に言われるまま書類に、携帯電話のメール・アドレスを記入した。

 その直後から、迷惑メールが頻繁に着信しだした。今のアドレスを使って長いが、迷惑メール防止法が出来て以降はなかったことだ。すぐにピンときた。「あの店から漏れたのだ」と。アドレスを変えるのもしゃくに障るので、着信拒否機能で粘り強く応戦し、なんとか撃退に成功した。

 こんな経験をすると、個人情報はむやみやたらと他人に教えるものではないな、と実感する。その一方で、「個人情報保護法」への過剰な反応ではないかと思える事例もある。

 同法が施行(2003年)されてまもなくのこと。ある地方都市の小学校のPTA関係者からこんな嘆きを聞いた。

 クラスの連絡網を記した書類を、子供が持って帰ってきた。見ると、保護者の名前はあるが、電話番号がない。これでは連絡の取りようがない。すぐさま学校に連絡して、「電話番号を教えて欲しい」と求めると、「個人情報ですので、ご本人から聞いて下さい」とのこと。「そのご本人に連絡できないから、聞いているのに!」と憤慨した。

 当然の怒りである。電話番号を記さないのは、保護者を守るためではない。学校の事なかれ主義や責任回避がみえみえだ。ちなみに、わが家の子供たちが通っていた小学校では連絡網にはちゃんと電話番号があった。

 ベネッセから個人情報が漏れたというので、大騒ぎになった。実は、わが家も被害者だ。同社からは「多大なるご心配とご迷惑をおかけした」と詫び状が届き、子供と保護者の名前、子供の生年月日などが漏れたことを知った。それでDMぐらいは来たのかもしれないが、今のところ実害はない。(森)