蔓延するコピペ文化
新型万能細胞とされる「STAP細胞」の論文不正問題で、理化学研究所の調査委員会が7日、筆頭著者の小保方晴子・研究ユニットリーダーの最終報告に対する不服申し立てを退け、再調査をしない方針を決めた。小保方氏の論文に不正・ねつ造があったとの結論(事実)をめぐる論争は一段落し、焦点は小保方氏の処分に移ることになった。
その数日前のことだ。大学の工学部に通う息子から久しぶりに電話があった。3年生になって実験とリポートに追われて寝る暇もないとのことだったが、特にグループでリポートを提出する際に「気分の悪いことがあった」という。
自分の担当部分でいろいろ文献を調べて実験の指導書とは違った書き方をしていると、リーダーが「これはちょっと違うんじゃない」といって指導書の文句をそのまま丸写しして書き直されたり、担当外の部分について「この方がいいんじゃないか」と自分の考えを伝えると、それがそのまま書き込まれていたりしたのだとか。聞くと、指導書や誰かと同じ表現が使われたリポートが不可になることはほとんどない(高評価を得ることもないが)という。
自分で調べもしないで指導書の表現をそのまま拝借したり、何のためらいもなく人の意見を自分の意見として書き込んだりすることが、ごく当たり前に行われ、それが通用しているとすれば、末恐ろしいことだ。
多忙な理系の学生にしてみれば、いちいち根を詰めてリポートを書いていたのでは体がもたない。教授も必修科目のリポートでむやみに不可を連発するわけにもいかないという事情もあるようだ。
だが、「三つ子の魂百まで」という諺(ことわざ)のように、「安易なリポートでも大丈夫」という考えがどこかで正されないと、第2、第3のSTAP論文問題につながりかねない。反省しなければならないのは早稲田や理研だけではない。(武)