道徳教科化の課題
文部科学省が設置した「道徳教育の充実に関する懇談会」の委員の話を聞く機会があった。懇談会は昨年末に「道徳教育教科化」提言をまとめている。それを受け、下村博文文科相が先月、中央教育審議会に諮問。早ければ平成27年度から「教科化」が先行実施される見通しだ。
「心のノート」を大幅に改訂した「私たちの道徳」も完成し、すべて順調に進んでいるように見えるが、その委員は「大きな課題が残っている」と話す。それが「教員養成」に関する課題で、まだこの点が不十分というのである。
具体的には、大学の教員養成課程では「道徳の指導法」について2単位履修しなければならないが、専門の研究者が少ないこともあり、道徳教育の専門家が講義を担当している大学は、わずか1割にすぎない(東京学芸大学の調査)。この状態では仮に履修単位を増やしても、教師の授業力向上はあまり期待できそうにない。
その課題を克服するためには、大学に道徳教育専攻・コースの設置と専門の研究者の養成を促し、教員養成課程の中身を充実させる必要があるが、それには道徳の専門免許の導入も検討すべきだと、先の委員は強調していた。逆に言うと、そういう制度設計まで進めていかなければ、「教科化」しても内容の充実につながらないというわけだ。
筆者は、小学生の保護者として学校の道徳教育には期待したい。ただ、それは教師がしっかり指導してくれるはず、という信頼があるからだ。幸い、私は熱心な先生に道徳を教えてもらった経験があるが、教える教師の授業力と熱意が高まらなければ、子供たちには何も伝わらない。