待機児巡るイタチごっこ
先月、厚生労働省が発表した保育事故報告によると、昨年1年間に保育施設で起こった事故は162件、うち死亡事故は19件で最多となった。
待機児全国ワーストワンの横浜市は、民間の保育参入や保育ママ制度を促進することでわずか3年間で待機児ゼロを達成し、モデル都市と呼ばれた。その横浜市で、昨年11月、保育ママが預かった1歳7カ月の乳児が昼寝中に死亡する事故が起こった。10分置きの確認をしていなかった保育ママの責任はあるが、風邪で37・4度の熱がある乳児を預けた親の無責任さも問われる事故だった。
保育報告にある死亡事故はすべて0~2歳の乳児である。しかも、15人が認可外の施設で死亡事故に至っている。
12月には札幌の無認可保育所で1歳の男児が昼弁当を食べている最中に死亡した。保育士がそばを離れたわずかの間に起こっている。認可外の保育施設では、保育士1人で数人をみている状況である。広さも十分ではない。
死亡事故に至らなくても、誤飲やけがといった事故、精神的なストレスなど、安心して預けられる保育環境とはいえない。行政の財政事情を考えると、待機児ゼロを掲げる限り、設置基準を緩和するか、認可外の施設に依存するしかない。
一年前の2月、寒空の下、乳幼児を抱える杉並区の母親が「保育園に入れろ!保育園を増やせ」とデモ行進していたのを思い出す。
赤ちゃんを母親の手元から離し、施設に預けることが、哺乳動物の子育ての営みから外れた不自然な形であるという認識があるのだろうか。子供の幸せを無視した親の勝手な主張に違和感を覚えた。
潜在的な待機児数は全国で80万人とも言われている。子供は親が育てるという原則に立ち返らなければ、待機児ゼロを巡るイタチごっこが続く。(光)