両陛下、日本の慰霊碑に供花
激戦の比島で鎮魂の祈り
【カリラヤ(マニラ近郊)時事】フィリピンを公式訪問中の天皇、皇后両陛下は29日、首都マニラから南東に約70㌔離れたラグナ州カリラヤにある「比島戦没者の碑」を訪れ、日本から持ってきた白菊の花を供えて、激戦地で犠牲となった約51万8000人の日本人戦没者を慰霊された。
慰霊碑の前には、両陛下の慰霊に合わせて計約150人の遺族や生還した元日本兵、在留邦人らが集まり、ともに犠牲者の冥福を祈った。
今回の訪問は国交正常化60周年を機とした友好親善が主な目的だったが、両陛下の強い意向で、昨年のパラオに続く海外での戦没者慰霊が実現した。両陛下は日本側の慰霊に先立ち、27日にマニラの英雄墓地にある「無名戦士の墓」を訪れて、フィリピン側の戦没者を慰霊されている。
両陛下は供花の後、集まった遺族らに慰めの言葉を掛けて回られたほか、フィリピン戦の遺族会や生還した元日本兵の代表者7人とも懇談された。
両陛下と懇談した遺族代表は、富山県遺族会会長の田原政信さん(71)や、静岡県遺族会会長の杉山英夫さん(78)、フィリピン戦遺族らの連絡会「曙光(しょこう)会」事務局長の本間尚代さん(79)ら5人。生還兵の代表は、元陸軍中尉で戦後レイテ島での遺骨収集に尽力した松本実さん(95)と、元海軍マニラ陸戦隊員の森田義員さん(89)。
田原さん、杉山さん、本間さんの3人は、いずれも父親がフィリピンで戦死している。田原さんは陸軍軍人だった父正雄さんの写真を両陛下に見せ、自分が父親の出征後に生まれたことを伝え、「父が大変喜んでおります」と今回の慰霊に感謝した。天皇陛下からは「若い写真ですね、ご苦労されましたね」と慰めの言葉を掛けられたという。