錦織圭のまれて硬く、持ち味出せずに完敗


全米準優勝、色あせない戦いはスポーツ界全体に意義

錦織圭のまれて硬く、持ち味出せずに完敗

男子シングルスで優勝しトロフィーを掲げるチリッチ(右)と準優勝の錦織=8日、ニューヨーク(AFP=時事)

錦織圭のまれて硬く、持ち味出せずに完敗

テニスの全米オープン男子シングルス決勝のパブリックビューイングで、錦織圭選手の劣勢に天を仰ぐファンら=9日午前、東京都港区

 最後の球を、追うことすらできずに見送った。頂点にあと一歩届かず、ぼうぜんと空を見詰める。17本のサービスエースと38本の決定打を浴びた錦織は「自分のテニスができなかった」。思わぬ完敗だった。

 日本選手として初の舞台。勝ってもう一つ歴史をつくりたかったが、決勝はそれまでの試合とは違った。「緊張もあったし、気持ちが高ぶるのをなかなか抑えられなかった」。独特の雰囲気にのまれて硬さが目立ち、本来のテニスは影を潜めた。逆にチリッチに隙はない。どのセットも3ゲームを奪うのがやっとだった。

 ブレークポイントを握りながら、強烈なフォアハンドやサーブで挽回された第1セット第1ゲームが象徴的。コイントスを制して最初にサーブ権を握った相手の出はなをくじけば、展開は変わっていただろう。このセット第6ゲームで最初のブレークを許して劣勢に立ち、ついに反撃に転じることはできなかった。

 チャンスをつかんでも、勝負どころでサービスエースなどでしのがれた。優位に立ちたかったラリーでも、時折交ぜてくる緩く深い球に乱されミスを重ねた。第1サーブを55%しかポイントにつなげられず、相手はその割合が80%。差は歴然だった。

 コート上のインタビューで少し笑みも見せたが、準優勝のプレートを受け取ると硬い表情に戻った。「簡単に来られるところではないので、チャンスを逃したのは悔しい」。達成感より悔しさの方が大きいようだが、先がある24歳にとって、世界一の座に再挑戦する機会は今後もあるに違いない。(ニューヨーク時事)