クロマグロ、水槽産卵と受精卵の確保に成功


専用施設での成功は世界初、安定養殖に期待

クロマグロ、水槽産卵と受精卵の確保に成功

水産総合研究センターが世界で初めて陸上水槽での採卵、ふ化に成功したクロマグロの受精卵(写真上)と稚魚(同下)(独立行政法人水産総合研究センター提供)

 独立行政法人水産総合研究センター(横浜市)は23日、長崎市の西海区水産研究所にある大型の陸上水槽で、クロマグロの産卵と受精卵の確保に成功したと発表した。海面いけすや水族館の水槽などでの産卵例はあるが、水温や日照時間などを制御でき、安定した養殖が期待できる専用施設での成功は世界初という。

 高級食材として人気のクロマグロだが、太平洋で資源量が減少し、漁獲が規制されている。マグロの養殖では、近畿大学が2002年に卵から成魚まで育てる「完全養殖」に成功したが、海面いけすを使うため、自然条件に左右され、卵や稚魚の確保が安定しないという課題があった。今回は陸上の専用施設を使用するため、卵や稚魚の安定的な確保が見込まれる。

 同センターによると、昨年5月から体長約1メートルの2歳魚126匹を研究所内の二つの円形水槽(直径20メートル、深さ6メートル)で飼育。水温を18~29度に保ち、日照時間を自然環境に近い状態で制御していたところ、今年5月16日に産卵が確認された。現在も産卵は続いており、産卵数は約20万個、ふ化した稚魚は数万匹に上るという。

 今後、産卵に適した条件の精査や産卵回数の調査など生態研究を進める。研究所の虫明敬一まぐろ増養殖研究センター長は「今後10年以内に養殖マグロの2~3割を人工的に生まれた稚魚で賄えるようにしたい」と話している。