スパイ擁護?韓国の「民弁」の正体は
韓国の左派系弁護士団体「民主社会のための弁護士会(略称・民弁)」が、数々のスパイ事件で容疑者をかばうため裁判を妨害したり、証言を意図的に覆させたなどとして批判を浴びている。民弁とはいったいどんな団体なのだろうか。(ソウル・上田勇実)
政治目的で裁判妨害
盧元大統領ら親北派輩出
脱北者を偽装して韓国入りした後、ソウル市契約職に採用され、国内の脱北者たちの個人情報を北朝鮮に流出させていた疑いで元北朝鮮在住華僑の男性容疑者が逮捕・起訴された事件。容疑者は一審で証拠不十分で無罪となり、控訴審でも捜査当局が証拠を偽造した疑いが高まるなど“ポカ”をしたため、いまだ容疑者がスパイか否かという肝心の部分があいまいになったままだ。
実はこの事件で容疑者を陰に陽に助けているのが民弁所属の弁護士たちだといわれる。民弁は容疑者の妹に対し、肉親の情を利用して一度は告白した兄の犯行事実を覆すよう執拗(しつよう)に迫り、号泣するまで追い詰めたとみられている。また捜査当局の証拠が偽造であるという証拠をいち早く示したのも民弁だった。
捜査当局は証拠偽造で南在俊・国家情報院長の謝罪、幹部の引責辞任、関係者の起訴や自殺未遂など窮地に追い込まれる一方、容疑者は新たな証拠が出てこない限り、二審も無罪になる可能性が高い。マスコミから「国情院・検察が民弁に完敗した」(朝鮮日報)と揶揄(やゆ)される始末だ。
民弁は1985年、ソウル市九老区にある工業団地で発生した労組による大規模ストを弁護したのをきっかけに発足した「正義実践法曹人会」をもとに88年に結成された。会員数は約800人とみられ、全登録弁護士の8%ほどだという。
民弁が韓国社会で影響力を誇示したのは、自身が民弁出身の盧武鉉大統領の時代だ。当時、2012年大統領選で野党候補だった文在寅・新政治民主連合議員ら多数が青瓦台(大統領府)の秘書官などに登用された。政府では国情院院長、法務相などの要職にも抜擢(ばってき)され、国会議員にも多数当選を果たすなど、特権親北派を輩出した。
捜査当局がまとめた民弁所属弁護士の弁護事例によれば、昨年、内乱陰謀容疑で韓国中が大騒ぎとなった極左野党・統合進歩党の李石基議員の事件で、民弁は検察側が確保した証拠の入手経緯に文句を付けたり、弁護側証人を突然2倍以上に増やすなど、「裁判遅延戦術」を取ってきた。
また「旺載山」という地下組織が北朝鮮からスパイ潜入の手引きや国政選挙介入、軍機密情報収集などに関する指令を受け、一部を実行に移していた事件(11年)では、容疑者が北朝鮮の最高指導者・金日成主席から直接指令を受けていたことを知りながら、容疑者に対し黙秘権を行使するよう求めていたことも分かっているという。自分たちの政治的目的のために裁判を妨害したわけだ。
民弁は最近も報告書で、統合進歩党が憲法裁判所による政党解散審査を受けていることについて「少数政党弾圧だ」と批判したり、民弁所属のある弁護士が「韓半島情勢が不安定なのは米国と韓国のせい」と発言するなど、親北ぶりをいかんなく発揮している。
法曹界の左傾化を危惧する保守派からは民弁解散を求める声も出始めている。