私有林や鎮守の森など認定、生物多様性保全へ


希少動植物が生息する区域など環境省が認定、22年度から

私有林や鎮守の森など認定、生物多様性保全へ

臨海工場地帯の周辺に広がる緑地=愛知県知多市(住友林業提供)

 環境省は、企業が所有する森林や「鎮守の森」、里山などのうち、希少な動植物が生息していたり、原生的な自然が残っていたりする区域を認定し、生物多様性の保全を強化する取り組みを始める。2022年度に試行し、23年度末までに100地域の認定を目指す。

 政府は21年6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、30年までに陸地と海域のそれぞれ30%を保護する目標に合意。国連生物多様性条約の締約国会議も、22年に同様の目標を決める見通しだ。環境省は国内でも「30%」を達成するため、国立公園といった従来の保護地域に加え、民間所有の森林などを活用する。

 企業や個人、寺社、環境保護団体から、区域を募集。多様性があれば、河川敷やゴルフ場、緑化された屋上なども対象となる。環境省が審査・認定し、5年ごとに保全状況の報告を求める。

 ①絶滅危惧種といった希少動植物が生息②人が手を付けていない原生的な生態系が存在③動物の越冬地や餌場-などのうち、一つ以上に当てはまる区域を認定する。環境省の担当者は「いろんな所に可能性がある。身近な自然が認定されることで、関心を持ってほしい」と語る。

 新たな取り組みには企業も注目する。愛知県知多市の臨海工場地帯はタヌキや野ウサギが生息する緑地に囲まれ、10年ほど前から地元自治体や立地企業、大学などから成るグループが保全を進めている。活動に携わる関係者は認定制度について「協力したいという企業は多い」と前向きだ。

 近年は企業や金融機関が投資先や取引先を決める際、環境問題に積極的な企業を選ぶケースが増える傾向にある。先の関係者は「気候変動対策に加え、何らかの自然保全活動に取り組まないと、企業の持続性が問われる時代では」と語った。