THAAD配備、韓国次期大統領も支持せよ


 米韓両軍は韓国南部・星州(慶尚北道)への配備が決まっていた北朝鮮弾道ミサイル迎撃用の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」システムの一部装備を搬入した。韓国はまだ北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対処するための十分な迎撃能力を確保しているとは言えず、その意味で今回の搬入は極めて現実的かつ不可欠な措置である。

 北の脅威で待ったなし

 搬入されたのは国内の米軍基地で保管されていた移動式発射台や高性能レーダーで、反対派住民の妨害などを考慮し、数千人の警官を動員する中、深夜から未明にかけて実施された。韓国軍当局はこれで実際にTHAADの運用が可能になったと明らかにしており、残りの装備などを追加で搬入し年内に完全なシステム運用にこぎつけたい考えのようだ。

 北朝鮮はいつ6回目の核実験を強行しても不思議ではない状況だ。米本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発にも依然として力を入れているとされる。故金日成主席生誕の日に合わせ約1年半ぶりに平壌で行われた軍事パレードではICBM級と思われるミサイルも登場している。THAAD配備が待ったなしの課題と言われるのは当然だ。

 問題は来月9日に迫った韓国大統領選で支持率トップを維持する最大野党「共に民主党」の文在寅候補がTHAAD配備に慎重な姿勢を崩していないことだ。今回の搬入は選挙前に駆け込み的に行われたのではないかとする見方も出ている。

 文氏は自分が当選すれば、この問題でトランプ米大統領と再協議し、国内的には国会批准手続きや反対派との話し合いなどにも応じる考えを示したが、北朝鮮の脅威を自ら高めるに等しい暴挙と言える。米国との同盟関係にもひびが入りかねない。

 安全保障問題は政治と切り離さなければならない。特に選挙前はさまざまな誘惑がある。対北融和派を刺激したくないと言って配備に消極的であったり、逆に保守票が欲しくて配備を支持したりするという候補もいるようだが、安保問題を選挙に利用するのは禁物だ。

 THAAD装備の搬入に中露両国が早速反発している。中国外務省報道官は「地域の戦略的バランスを崩し、非核化を妨げる」と米韓双方に抗議。ロシアのラブロフ外相も韓半島の緊張を高めていると批判した。北朝鮮を増長させるかのような全く的外れの主張にすぎないことは明白だ。

 中国は韓国がTHAAD配備を見送るよう、中国人の韓国団体旅行を制限したり中国に進出している韓国企業に対する不買運動を煽(あお)ったりするなど経済圧力とも言える露骨な嫌がらせを行ってきたが、今後も同じような仕打ちが予想される。決してこれに屈するようなことがあってはならない。

 韓国を守る安保連携

 韓国の次期大統領が誰になるにせよ、これだけ北朝鮮の脅威が増す中、北東アジアで培ってきた日米韓3カ国の安保連携を後戻りさせるような政策を取ることがあってはならない。連携維持は韓国自身の安全と平和を守る道だ。