北留学生に反体制教育、韓国団体が中国各地の大学で
北朝鮮に民主化を促す韓国市民団体が北京大学をはじめ中国各地の大学に留学中の北朝鮮留学生に反体制教育を施し、帰国後の民主化リーダーとして育成していることが分かった。金正恩朝鮮労働党委員長の直系血族による独裁体制が70年以上も続く北朝鮮を内部から崩壊させようという試みで、米国から財政支援を受け2010年以降、本格的に行われているとみられる。(ソウル・上田勇実)
帰国後の民主化リーダーに育成 米基金が財政支援
団体関係者がこのほど、本紙に明らかにしたところによると、反体制教育の対象は経済的に余裕があり、北京や瀋陽、大連など中国各地の大学に留学してくる朝鮮労働党幹部や富裕層の子弟。中国には常時、北朝鮮からの留学生が約3000人いるといい、留学生が比較的多い大学を選んで集中的に行っている。
まず教育係として中国・延辺朝鮮族自治州の州都・延吉市にある延辺大学や同大系列の延辺科学技術大学など東北3省の大学に在学中の朝鮮族らを育成した後、韓国人と共に中国各地の大学に正規の学生として入学させ、「朝鮮文化」などをテーマにして北朝鮮からの留学生を募った校内サークルを作り、交友関係を深めていく。
ある程度、信頼関係ができた段階で「民主主義が何か知っているか」「朝鮮(北朝鮮)を民主的と思うか」などと問い掛けたり、金氏一族の恥部を暴いた本をあげたりして北朝鮮の体制について自ら考えさせるよう仕向ける。北留学生は通常、語学研修期間を含め中国に5年間滞在し、団体側は可能な限り留学生たちが1年生の時に接触を試みるという。
金正恩氏批判などで留学生たちと話が通じるようになった後は、最終検証と称し金日成・金正日両氏の写真を目の前で一緒に破る一種の「踏み絵」儀式を行う。北朝鮮で長年、「最高尊厳」として崇(あが)めてきた両氏の写真を破る行為は、転向した留学生にとっても心理的負担感はかなり大きいという。こうした反体制教育を受けた留学生は「すでにかなりの人数に達する」(団体関係者)といい、帰国後、「北朝鮮の民主化リーダーとして独裁体制打倒の先頭に立つ予備軍になる」(同)ことが期待されている。
反体制教育は韓国の国家情報院によるものとは別途に、他国の民主化を支援する目的で米議会が出資する全米民主主義基金(NED)の財政支援を受けて行われているもようだ。
北留学生の周囲では本国から派遣されてきた北朝鮮保衛部要員の監視が厳しいため、危険が及ばないように接触が行われている。