密入国者も命懸け
マイアミの風
ニカラグア人でメキシコから米国に密入国した男性に話を聞いたことがあった。ニカラグア内戦で反政府軍だったゆえかキューバに渡り数年生活したのち帰国した。その後結婚し子供も生まれたが、生活も苦しく米国に渡ることを決意する。
ニカラグアからはホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラといった国々をバスなどで乗り継ぎ、やっとメキシコに入る。ここからさらに北上して米国との国境近くに行かなければならない。メキシコに接するアリゾナやテキサスといった州から密入国するわけだが、ここにメキシコ人の斡旋業者が控えていて、容赦なく料金を取り立ててから初めて国境沿いの場所に連れていく。
何が切ないといって同じラテン人なのにメキシコ人(斡旋業者)は腹いっぱい食べて自分たちは飲まず食わずで出発地に向かう、という現実だ。砂漠地帯の寒暖の差が激しい中を米国をめざして突き進む。一緒のグループの男たちと、昼は茂みに隠れて休み夜歩くという日々。濁流に呑まれ仲間たちが次々に死んでいく。ある時上空からヘリコプターの音がするのでとっさにやぶに飛び込んだ。瞬間そこで休んでいた毒蛇と遭遇。彼も驚く、蛇も驚く。グループで密入国したが、最終的に残ったのは2人だけだったという。
米国の不法滞在者は1千万人を超える。ソーシャルセキュリティを保持していないと正規の仕事にはつけない。偽装結婚をしたり、不正なソーシャルセキューリティの取得と様々な方法を試みる。
今増えているのは、チャベス大統領のキューバとの接近で南米でも石油産出国で豊かだったベネズエラからの流入だ。ベネズエラはキューバ化が進み、物資不足が深刻だ。キューバはベネズエラに医師や軍人を派遣してその見返りとして石油などで決済する方法をとっている。チャベス大統領には一種のカリスマ性があったが現大統領にはそれはない。マイアミにも様々な国の事情が流れ込んでいる。