三方良しのお寺婚活
浜松市に龍雲寺という寺がある。数年前からお寺婚活「吉縁会」を開いている。「成人の日」の翌日、昨今の婚活事情をルポしたテレビ番組で「吉縁会」を紹介していた。会員4600人、臨済宗系の寺を中心に東海や関東など全国に広がっているという。
既存の婚活事業と違って、寺コンと呼ぶお寺婚活の魅力は寺が仲介する安心感、そして費用の安さにある。入会費・年会費、成婚した時のお礼金のようなものは一切不要で、当日の参加費のみ。交通費をかけて、遠くは北海道から参加する者もいるそうだ。「吉縁会」では誕生したカップルは85組。住職の仲人で寺で結婚式を挙げる人もいる。
筆者の知人に結婚紹介事業を手掛けている女性がいる。彼女は「こちらが良かろうと思う相手を紹介しても年収、正社員、学歴の三つがないと話が前に進まない。労多くて、事業になりにくい」と話していた。寺コンが広がる理由は安さと安心感だが、それだけではない。
住職の法話に秘密があるようだ。本堂に集まった男女は正座して、住職から相手を選ぶときの姿勢や結婚の心構えを聞く。こうした法話が男女を結婚に導き、後々も離婚を抑制する力になっている、と考えるのは期待しすぎか。
寺の数は全国で7万7000と言われ、コンビニよりも寺の方が2万5千も多い。多くは檀家離れに悩んでいる。そして消滅の危機にある。
若者を呼び込み寺離れを防ぎたい寺、結婚したいが出会いがない男女、そして日本の少子化を抑制したい政府。寺コンは三方の思いが合致するなかなか上手(うま)いシステムではないか。
少子化を背景に、三方良しの寺コンはこれから広がる可能性がある。問題は婚活に行かない、結婚したくない若者をどのように結婚に導くか。妙案が浮かばない。この難題に心の救済を唱える寺はどう答えるか。(光)