ものづくりの心
先月15日、テレビ東京のトーク番組「カンブリア宮殿」に英電機メーカー「ダイソン」の創設者でチーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏が出演した。
ダイソンと言えば、世界で初めてサイクロン式の掃除機を開発・製造した会社として知られるが、特に驚かされたのは、羽根のない扇風機(エアマルチプライアー)。高価ではあるが、扇風機に対する従来の固定観念を完全に打ち砕いた。どうしてこんな画期的な製品が作れるのか、常日頃から関心をもっていた。
番組を見て、それを可能にしているのがダイソン氏の「ものづくりの心」であることがよく分かった。
同氏は「日常生活の中の不都合が発想の源」だと強調する。サイクロン式掃除機開発のきっかけも、従来の紙パック式の掃除機の目詰まりによる吸引力の低下や、紙パック交換の不便さを身に染みて感じたから。ただ、そこからが普通の人とは違う。何と、納得のいくものが出来上がるまで、5年間に5127もの試作品を作ったのだという。
そこまでこだわるのは「消費者が求めているのは純粋にいい製品であり、よい製品を作れば会社は発展できる。景気が悪くなった時に生き残るのは最高の製品を作っている会社だ」という信念からだ。だから失敗を恐れず、とことんまで最高のものを追求するし、機能よりデザイン、製品より会社経営を重視する風潮や、小出しの改良だけでよしとする日本のマーケティング担当者たちに真っ向からノーを突きつける。
「とても出来の悪い生徒だった。いい点は取れないが努力はした。絶対にあきらめない」と語るダイソン氏。「失敗を乗り越えて問題の解決策を探る。それが人生というもの。学校では一番多く失敗し乗り越えた人に最高点をあげるべきだ」と説く。ソニーなど日本の製造業のトップからもこんな話が聞きたいものだ。(武)