水牛車で対立する竹富島


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 石垣島からフェリーで約15分の距離にある竹富島(八重山郡竹富町)。観光で成り立っている島の経済を牽引(けんいん)するのは、水牛車観光だ。牛車に乗って赤瓦の古民家の集落の景色をゆっくりと楽しむ。ところが、水牛車に乗ると、無数の抗議看板が目に付いた。

 「住民は安心して暮らしたい」「石垣を壊すな。水牛小便は臭い」

 2008年、最大手の竹富観光センターが移転した当時も大きな問題に発展したという。施設の近くに、小・中学校、保育所、診療所、集会所、御嶽(うたき)(聖なる森)があるからだ。6年たった今、再び移設の問題が勃発している。

 人口わずか300人余の竹富島には毎日、平均1000人ほどの観光客が訪れる。牛車からは民家は丸見えで、民家の庭先を訪れる観光客も多い。ところが、牛車ルートに当たる民家は特に見返りはないという。

 当の竹富観光センターの職員は、「ライバル会社のやっかみ」が原因と言う。ライバルの新田観光は、水牛車観光では先輩に当たる。看板が景観を損なっている問題について同職員は、「1週間すれば撤去されますよ」とそっけない様子。反対派の住民らとの間で何らかの取引がなされたのであろうか。

 竹富島は竹富町にある九つの有人島の一つにすぎないが、竹富町がニュースになるのは「八重山教科書問題」だ。中学校の公民で八重山地区採択協議会が選んだ教科書とは別の教科書を採択している竹富町教委。八重山教委や県教委との話し合いは平行線。文部科学省は県教委に竹富町への是正要求を指示したが、県教委はただ手をこまねいている。

 住民は権力者と対立することに慣れているのかもしれない。(T)