燕麦を「イングランドではふつう馬の餌に…


 燕麦を「イングランドではふつう馬の餌になるが、スコットランドでは人の食料となる」と「英語辞典」に書いたサミュエル・ジョンソン博士に対し、助手のスコットランド人ジェームズ・ボズウェルが「ゆえにイングランドでは馬が優秀で、スコットランドでは人が優秀である」とやり返したことは前に書いた。

 実際、歴史に名を残すスコットランド人は多い。古典派経済学の大家アダム・スミスもそうだ。米国の大富豪アンドリュー・カーネギーは少年時代、両親と共にスコットランドから移住してきた。

 蒸気機関を改良したジェームズ・ワット、電話の発明者グラハム・ベルら人類史に大きく貢献した科学者、発明家も驚くほど多い。

 幕末から明治にかけて来日したスコットランド人も少なくない。志士たちと交流を持った商人トマス・グラバーが最も有名だ。

 ここに挙げた世界史的人物を英国人とは知っていても、民族的にはスコットランド人だと知る人はそう多くないだろう。一方、彼らの活躍が英国の国力や世界的基盤の上で花開いたことも事実だ。

 独立の是非を問う住民投票で、スコットランドは英国にとどまることになった。キャメロン首相が一層の権限付与を約束したのだから、独立派の運動も無駄ではなかった。少なくともスコットランドと言えばウイスキーやキルト、バグパイプくらいしか頭に浮かばなかった人々に、その独自性をより深く認識させたことは確かだろう。