「昔、私の田舎(鳥取県)は裏日本と言われ…


 「昔、私の田舎(鳥取県)は裏日本と言われていた」とテレビで石破茂地方創生担当相が語っていた。今では言われなくなったが、30年ほど前まで「裏日本」という呼び名は普通に使われていた。いつごろ、誰が決めたのか、太平洋沿岸が「表日本」で、日本海沿岸は「裏日本」だった。

 神奈川県鎌倉市民は、海岸に近い駅西口を「裏駅」と呼ぶ。鶴岡八幡宮に近い東口は「表口」という。一般に、「表」の方が「裏」に対して優位だとの前提があるのは確かだ。

 「上り下り」も「表裏」と似ている。東京から大阪へ向かう新幹線は「下り」。最近はほとんど使われないが、「下阪(げはん)」という言葉は辞書に残っている。

 逆に「上京」は、今でも用いられている。「下らない」という語は、当時の京の都から江戸を含む地方へ下るだけの価値のないものを意味した。

 「東京へ出る」という言い方もある。狭い田舎から広い東京へ出る、というイメージだ。田舎には海や田園風景が広がっている場合も多いのだが、ゴミゴミした東京へ向かうことが心理的に「出る」と感じられるのは確かだ。東京都内でも「新宿に出る」などと言う。より繁華な場所へ向かう時、「出る」が使われる。

 なお、東京の八王子駅と横浜市の東神奈川駅を結ぶJR横浜線は、八王子へ向かうのが「下り」。「上り」が正解なのでは?とも思うが、八王子市と横浜市の都市力の上下関係でそうなっているのだろう。