静岡県の川勝平太知事が、全国学力テストで…
静岡県の川勝平太知事が、全国学力テストで小学6年国語Aの成績が全国平均以上だった学校の校長名を、前年に続き50音順で公表した。独自の判断で行ったという。
それに対し、下村博文文部科学相は「知事が権限を逸脱して一方的に公表することはルール違反。極めて遺憾だ」「黙認すれば実施要領の否定にもなる」と指摘した。
ところが、川勝知事のしたことがなぜ批判の対象となるのか――という読者の声を聞いた。知事の行為は学習意欲を高めるための処置ではないのか、というわけだ。しかし、その声には賛同しかねる。
教育基本法5条には、義務教育について「国民は、その保護する子に(中略)普通教育を受けさせる義務を負う」とある。国は、教育内容、教え方にも責任を持たねばならない。
ところが、その教育内容の決定は必ずしも容易ではない。時代のニーズを探るばかりでは、教育方針の一貫した柱を見失いかねない。教育費が圧迫され臨時教員が増えるなど、各自治体の教育事情が優先しがちな今日ではなおさらだ。
こうした背景の下に平成19年から始まったのが、全国学力テストで、児童・生徒の実態を把握するための直接的なデータ取りだ。昭和30年代に実施された同様の全国テストが陥った点取り競争を煽(あお)るものではない。その意図を承知しないと、知事の行為は、とんだ筋違いの結果に終わってしまいかねない。